
猛暑の満月の昼下がり、葉山マリーナからヨットが一艘出た。
乗組員は5名、私を含め操船には何の役にも立たない客としての3名、操船員2名。
ダダダダダダダダ…、港を出るまで軽やかなエンジン音。
「さあ、ここらでいいでしょう、帆を張りまーす!」とキャプテン原の一声で、エンジン音はピタリと止み、キリキリキリキリと帆を張るロープが回される。
ダバッ!と帆が一気に開くと、バオバオバオバオと風を受ける音が耳に届く。
波を切ってヨットは進む。「目指すは12時の方向!時計と同じ要領で方向を示します」とキャプテンからの説明。同乗の女性の「ああ、サザンオールスターズの“勝手にしんどバット”の中で出て来る歌詞は、これなのね!」。
そう言われてハタと気がついた。♪今何時?そうねだいたいね~♪。長年のカラオケの持ち歌詞を知らないで歌っていた…。
ヨットから垂らした糸に、サバがこれでもかというぐらいに釣れて、釣れて、同乗の奇麗な女性が
「また、釣れちゃった!これって河瀬さんの本のタイトルよね!」。
太陽が水平線に沈んで、大きな満月が波間に漂う。全員、ただボー然と月を見上げる。
「奇麗ね…」。「本当に奇麗だ…」。
洋上でワインを飲みながらそれぞれの人生を語り合う。人生の方向も「12時を目指せ!」だ。
言葉に出来ない感情がひとり一人の心に沈んで行った夜でした。
ちなみに私の本のタイトルは
「また、売れちゃった!」(ダイヤモンド社刊)ですから勘違いのないように…。